65kmのトレイルレースに参加して思ったこと、感じたこと。

部長の榎本です。

「マウンテントレイルin野沢温泉」というトレイルランニングの大会に参加してきました。

この大会は「65Km」「23Km」「14Km」の3つのカテゴリーがあり、自分が出場したのは65kmの部。

65kmという長い距離を、起伏のある山の中で走る。冷静に考えると意味不明ですよね。とても正気の沙汰とは思えない。でも、世の中には上には上があり、100kmや160kmといった超ロングレース(いわゆるウルトラトレイル)も存在する。

なぜ、人はそんなに長い距離を走るのか? 今回自分が65kmの大会に出て、その理由の片鱗を感じることができたし、ロードとトレイルの魅力の違いについて考えさせることが少なからずあったので、ここにメモとして書き記しておきたいと思います。

コースはこんな感じ。

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地図を見ても何がなんだかという感じだと思いますが・・・。
65kmの部は第一セクション(23km)、第二セクション(14km)、第三セクション(28km)の3つのセクションに分かれていて、それぞれのセクションをフィニッシュするたびにスタート地点に戻ってくる。そしてその都度エイドステーションで食事や休憩をとったり、自分の荷物から水や食料を補給できたりする。

トレイルのレースは、山本副部長といっしょに出た前回の西丹沢に続いて2回目。距離は今回がもちろん最長。わざわざ遠くまで行くなら、いちばん長いのに出てやろうと、ノリと勢いでエントリーしたわけですが、65kmという距離がまったく想像つかないというのが正直なところ。数字のうえでは、フルマラソンハーフマラソンを足したくらいの距離ではあるものの、トレイルなので上り下りもあるわけで、話はそう単純じゃない。

ロードのフルやハーフの場合、どれくらいのペースで走れば、どれくらいの時間で完走できるか、かなり具体的にイメージできる。でも、65kmもの長い距離、しかもアップダウンのあるトレイルとなると、先々を予測することは不可能。「ずっと走り続ければ、そのうちゴールにたどりつくだろう」くらいしか戦略の立てようがない。ゆえに、緻密なペース配分を求められるロードの大会よりも気楽に構えることができたのもまた事実だった、かも。

現地へは前日入り。受付を済ませてゼッケンを受け取り、野沢温泉の宿で一泊して、翌朝6時過ぎにスタート会場のオリンピックスポーツパークへ。

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スタート時の天候は小雨。しかも霧が濃くて視界不良。参加者は500人くらいだったのかな。思いのほか多くてちょっとびっくり。さすが65kmに挑む猛者たちだけあって、みんな装備は本格派。自分はサロモンのベスト型ザックに水、食料、地図、ファーストエイドキットなどを詰め、足元は西丹沢のときと同じサロモンのスピードクロス3を着用。

スタートしてしばらくすると、野沢温泉の温泉街へ。

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地元の人たちや観光客のあたたかい応援が励みになる。

そして6km地点あたりから林道に入り・・・

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10km地点あたりから一本道の登山道へ。

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途中、ハシゴで昇るテクニカルな箇所があったりしながら・・・

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息を切らせながら登山道をしばらく登り進めていくと、毛無山の山頂に到着。標高1650mは今回のコースの最高標高地点。

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しかし濃霧のため、残念ながら視界はほぼゼロ。

前日の雨で路面がぬかるんでいたので、サロモンのスピードクロス3のグリップ力に優れたアウトソールが威力を発揮。

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ここからはトレイルの醍醐味である下りへ。無理のない程度にスピードを出しながら気持ちよく下っていきます。

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スタートから2時間半ほどで、長坂ゴンドラリフトのやまびこ駅に到着。

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ここにはエイドステーションがあり、用意されていた野沢菜のおにぎりやオレンジなどを食べ、ザックのショルダー部に入れたフラスクの水を補充し、再びスタート。

やはり山の天気は変わりやすい。しばらく走り進めると、空を覆っていた分厚い雲が去り、青空がのぞく。

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ここは冬はスキー場のゲレンデになるのかな。視界も良くて、今回のレースでいちばん気持ちよく走れたポイント。

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そしてようやく第一セクションの23kmがフィニッシュし、スタート地点に戻ってきた。タイムは4時間12分。体力的にはまだまだ余裕。ここでもまた野沢菜のおにぎりを食べ、一服したりしながら、ザック内の水やジェルなどを補充し、第二セクション(14km)に向かっていく。

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天気はすっかり快晴。日差しがじりじりと照りつけ、体力を容赦なく奪っていく。気温はおそらく30℃以上。かなり暑い。

第二セクションでは、のどかな田舎道をしばらく走った後、白竜湖横のフラットな林道を進み、小菅神社という山の上にある神社を目指して石の階段をひたすら登っていく。

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この階段が永遠に続くかと思えるほどハードだった。

そして下りは、気持ちよく走れるふかふかのトレイル。

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キツイ登りがあれば、気持ちいい下りが必ずある。これこそがトレイルの醍醐味。

そんなこんなで第二セクションの14kmをフィニッシュ。

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第二セクションのタイムは3時間12分。トータルで37kmを走破し、この時点でスタートから7時間半が経過。

エイドステーションで30分ほど休憩をとった後、最後のセクション、第三セクション(28km)へ。レース終盤、日が暮れるのは確実なので、ザックにヘッドランプとハンドランプを詰めていく。

結果を先に書くと、この最後のセクションをフィニッシュするのに5時間以上も要した。走れども走れどもゴールははるか先で、心が折れまくる。体力はもはや限界。写真を撮る余裕もなし。前後にランナーはほとんどおらず、寂しさもこみ上げてくる。俺、こんな山の中で何をやってるんだろう? なんでこんな大会にエントリーしてしまったんだろう? なぜだか自分に対して無性に腹が立ってきた。でも、「ずっと走り続ければ、そのうちゴールにたどりつくだろう」という当初の考えはあながち間違いではなく、すっかり日が暮れた夜の山道をヘッドランプで照らしつつ、へとへとになりながら走り続けているうちに、徐々にゴールラインが近づいてくる。

そしてフィニッシュ。総合タイムは12時間56分。朝7時にスタートして、ゴールにたどりついたのは夜の8時前。順位は171位。真ん中よりちょっと上くらいだったけれど、そんなことはもはやどうでもよくて、頭のなかは「もう走らなくていいんだ」という安堵感しかなかった。

自分が走ったルートをNIKE+で表示すると、こんな感じ。

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いま改めてこれを見ると、ぞっとします。

ロードのフルマラソンも、もちろんそれなりにキツイ。キツイけれど、そのキツかった記憶は時間が経つにつれて甘美な思い出にすり替わってしまい、懲りずに「また走りたい」と思ってしまう。これは経験者ならわかってもらえるはずの「マラソンあるある」かと。で、65kmを完走して2週間ほど経ったいま思うことは、ロードよりもトレイルのほうが、そして距離が長くなればなるほど、記憶の美化のされ方が強まるんじゃないかなということ。だからこそ、人は100kmや160kmといった常人では考えられない長い距離に挑むんじゃないかと。自分自身、65kmの完走直後は「ロングトレイルはもう懲り懲り」と思っていたたものの、いまでは「また走りたい」という思いが日に日に強まりつつある。いずれにせよ、ロードかトレイルか、あるいは距離の長短を問わず、マラソンってつくづく不思議なスポーツだなと改めて。

あと、意外だったのは、完走後に身体が欲していたのは、ビールではなく、コーラだったこと。ゴール地点から宿への帰り道に自販機で買って飲んだコーラの美味さは異常だった。後日、知り合いのベテラントレイルランナーに話を聞くと、トレイルランニングのレース中やレース後にコーラはつきものらしい。あれは何なのでしょうね。